7000回転の世界・フォードVSフェラーリ
©️2019 Twentieth Century Fox Film Corporation
7点
「1966年のル・マン24時間レースをめぐる実話を映画化した伝記ドラマ。フォード・モーター社からル・マンでの勝利を命じられた男たちが、王者フェラーリを打ち負かすため、意地とプライドを懸けた闘いに挑む。エンジニアを『オデッセイ』などのマット・デイモン、レーサーを『ザ・ファイター』などのクリスチャン・ベイルが演じる。『LOGAN/ローガン』などのジェームズ・マンゴールドがメガホンを取った。
カーレース界でフェラーリが圧倒的な力を持っていた1966年、エンジニアのキャロル・シェルビー(マット・デイモン)はフォード・モーター社からル・マンでの勝利を命じられる。敵を圧倒する新車開発に励む彼は、型破りなイギリス人レーサー、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)に目をつける。時間も資金も限られた中、二人はフェラーリに勝利するため力を合わせて試練を乗り越えていく。」
引用元https://movies.yahoo.co.jp/movie/369005/
前半に主に登場する3人のキャラクターのバッグラウンド、それぞれのキャラの周りの人間関係や置かれている状況、できる事が描かれるが、ジョン・バーザルが演じるキャラが中心となって描かれているシーンがあり、それが長く感じた。
なので、マット・デイモンとクリスチャンベイルから見たフォードという会社や役員という形で描く形であれば、主人公の2人との繋がりが感じられ、前半が長く感じることがなかったと思う。
それでも、フォード社がフェラーリ社を買収しようとしていた事実を興味深いなと思った。
レースシーンは、ハンドルやシフトレバーを操作する映像、表情を写す映像、車が走る映像のバランスが良く、状況が伝わってきた。
最初のマット・デイモンが運転するシーンは表情から緊張が伝わってきて、そのレースが過酷だと言うのが伝わってきた。
クリスチャン・ベイル演じるケン・マイルズの妻のキャラクターが良かった。夫を献身的に支え、時には、見守り、1人の人間として素晴らしい人に思えた。
ケン・マイルズは、職人気質で、1人で黙々と作業するのが好きだと言うのが伝わってきたが、肝心のフォードがフェラーリに勝つと言うことに対しての強い思いは、感じられなかった。
それが、後半のレースで感情移入しにくいな思ってしまった。
でも、レースのシーンは、300キロ以上で走る爽快感や華々しい演出だけでなく、クラッシュや死との隣り合わせだというのがよく描かれていたために、どこかでクラッシュしてしまうのではないかというような緊張感や緊迫感があった。
レースの危険性は、ケン・マイルズの息子のキャラクターが動揺する様子から、伝わってきた。
個人的にマッド・デイモン演じるキャロル・ジェイビーのキャラクターが感情移入できた。彼は、フォードの上層部と職人気質なケンの間に挟まれ苦悩するだけでなく、自分よりも運転技術があるケンを認め、支えていた。
この映画では、フォードがフェラーリに勝つというゴールが設定されていたが、そこまでいく過程が説明されないのが、登場人物達が感じているレースにかける思いや道のりが理解しにくく、温度差が生まれてしまっていたような気がした。
それに、セリフで説明するのが多い気がした。セリフだけでなく、映像と合わせて描けば、より観客に伝わると思った。
あと、映画の最初にフォードの実力とフェラーリの実力に差がある事が分かるような描写が有れば、不可能に近いような挑戦だというのが印象づけられ、後半のレースシーンが登場人物にとっても観客にとっても重要なシーンになったはず。
個人的に、映画の前半で、フォードの社長や幹部の空気感が分かる描写やと彼らが決断するまでを端的にまとめる。
次に、マット・デイモンとクリスチャン・ベイルの人間関係や周りの状況、その人となりが分かるシーンを描く。
そして、彼らが不可能に思える挑戦に挑もうとする場面をフォードとフェラーリの違いや当時の常識が分かる客観的な映像を踏まえて描いて欲しいなと思った。
中盤では、彼らが目指す目標を必要な車のスペックを速さや重量などの数字で示すかあるレースで、記録を更新する必要があるといった分かりやすい形の目標を描いて、そこに向かうなかでの友情や夫婦愛いったドラマを描きつつ、挫折や対立を経て、最後のラストのレースシーンまで、緩急をつけつつ、テンポよく見せていければいいのかなと思った。
全体的には、映像美は最高で、人間ドラマやキャラクター像もしっかり描かれ、飽きる事なく、人間ドラマやレースシーンが楽しめる映画でした。